フランスで販路を開く営業の進め方 |数を打つより刺さる少数に絞る
フランスの販路開拓は、「数を打てば当たる」ものではありません。飛び込み営業の物量ではなく、ターゲットの見極めと、現地での関係づくりで決まります。実際、ある日本ブランドの初月営業では、提案メールを40通あまり、飛び込み訪問を20数件動かして、手応えのある商談まで進んだのは3件——打率にすると1割強でした。大事なのは、この数字に落胆することではなく、ここから刺さる少数に絞り込み、現地で関係を育てていくことです。パリと南仏での現地営業の経験から、営業の進め方を整理します。
01OVERVIEWいきなり飛び込んでも、すぐには売れない
まず、現実からお話しします。フランスに乗り込んで飛び込み営業をかければ注文が取れる、というイメージは、たいてい裏切られます。
ある日本ブランドのパリ初月の営業は、こういう数字でした。事前にリストアップした店へ提案メールを40通あまり送り、並行して飛び込み訪問を20数件。そこから、後日の商談まで進んだ「手応えのある相手」は3件です。打率で言えば1割強。決して悪い数字ではありませんが、「数を打てば次々決まる」という期待とは、だいぶ違います。
誤解されがちですが、飛び込みそのものは、決して門前払いされません。私たちの経験でも、飛び込んで嫌な顔をされた店は一つもなく、その場で話を聞いてくれることのほうが多いくらいです。「まずはメールで資料を送ってください」と言われることもありますが、それも拒絶ではなく、検討の入口です。フランスの店は、良いものには耳を開いてくれます。
難しいのは、そこから先です。ひとつは、既存の取引や好みが固まっていること。たとえば高級カシミヤの世界では、「カシミヤといえばイタリアの老舗ブランド、それで満足している」という声が返ってきます。良い商品を持っていても、置き換えてもらうには、そこを越える理由が要ります。
そして、フランスは商談から受注まで2ヶ月以上かかることが珍しくありません。オーナーがじっくり検討し、仕入れの時期も決まっているからです。つまり、数を打って即決を狙う営業は、フランスではそもそも噛み合いません。物量で押すほど、消耗だけが増えていきます。
02REALITY何が反応を分けたか — ターゲットと関係
では、3件の手応えと、そうでない大多数を分けたものは何か。振り返ると、答えははっきりしています。ターゲットが合っていたかどうか、そして関係があったかどうかです。
いちばん大きいのは、ターゲットの見極めと、その相手に合わせて売り方を変えることです。あるカシミヤブランドは、当初テーラー(仕立て屋)を中心に回りました。ところがテーラーは、スーツの仕立てが本業で、ニットの売り場はごく一部。しかも仕入れ先が固定されていて、そのまま卸で棚に置いてもらうのは簡単ではありませんでした。
そこで、打ち手を変えます。卸で常設の棚に入れるのが難しいなら、店頭で期間限定の販売会(受注会)を開く形を提案する——この売り方の工夫で、テーラーとの取引の糸口を開いていきました。そのうえで、新しい商品を積極的に取り入れる文化のある高級セレクトショップへと、対象を広げていったのです。相手の業態に合わせて、狙う相手も、売り方も変える。同じ商品でも、そこで反応がまるで違ってきます。
南仏の3都市を回ったときも同じでした。十数件を訪問する中で、次につながる芽が出たのは、親和性の高い店です。和の器と相性のいい茶葉店、日本文化への入口を持つ書店——そういう「その商品が自然に馴染む場所」ほど、話が前に進みました。逆に、いくら人通りが多くても、顧客の嗜好と商品がずれている店では、ていねいに断られました。
もうひとつ効いたのが、すでにある関係です。以前ある展示会でブースに立ち寄ってくれた店主が、その後こちらの商品を仕入れて実際に使ってくれていた、ということがありました。一度きちんと接点を持った相手は、時間をおいて実を結ぶことがある。飛び込みの一件目より、二度目・三度目の相手のほうが、ずっと近いのです。
03WHAT-WORKS営業の進め方 — 絞る、備える、聞く
ここまでを踏まえると、フランスでの営業の進め方は、自然と決まってきます。
第一に、「絞る」こと。手当たり次第ではなく、価格帯・ブランドイメージ・顧客層が自社と一致する相手に資源を集中します。富裕層の多いエリア、その商品を迎え入れる文化のある業態——狙いを定めるほど、限られた時間と足が効いてきます。数を減らすことは、手を抜くことではありません。むしろ、勝てるところに力を寄せることです。
第二に、「備える」こと。まず、フランス語の営業資料は必須です。フランスには英語を話せる人も多いのですが、それでもビジネスの場ではフランス語を好みます。英語だけで押し切ろうとすると、それだけで距離ができてしまう。フランス語の資料を主にして、英語は補助として添える——この順番が大切です(資料は現地で印刷することもできます)。加えて、飛び込みで話を聞いてもらえたら、その場で終わらせず、相手が社内で検討できる資料を渡しておく。この一手が、次の商談を早めます。
第三に、「聞く」こと。これがいちばん見落とされがちです。訪問は「売り込む場」ではなく「聞く場」だと考えたほうが、結局うまくいきます。現地の価格感、売れ筋の帯、包装の文化——店ごとにヒアリングすると、次の提案の精度が上がります。たとえば「この価格帯は少し高い、もう一段手頃なものがあれば」といった声は、そのまま次の一手になります。断られたときでさえ、その理由を聞ければ、それは次に活きる一次情報です。売れなかった訪問も、無駄にはなりません。
04HOW-TO一次接触を、どう受注へ育てるか
フランスの営業で最後に効いてくるのは、「焦らないこと」と「切らさないこと」です。
先に触れたとおり、フランスでは商談から受注まで2ヶ月以上かかります。初回訪問で興味を持ってもらえても、その場では決まりません。後日の商談、検討期間を経て、相手の仕入れ時期に合わせて、ようやく注文が動きます。ここで急かすと、かえって離れてしまう。相手のペースを尊重しながら、こちらから連絡を絶やさず、次の仕入れのタイミングに照準を合わせていく——この設計が受注を分けます。
そしてもうひとつ。フランスでは、メールを送り続けるより、現地で対面し続けるほうが、はるかに関係が進みます。顔を覚えてもらい、季節ごとに顔を出し、検討状況を対面で確認する。この地道な継続ができるかどうかが、一次接触を受注へ育てられるかの分かれ目です。裏を返せば、ここが日本から遠隔でやろうとすると、いちばん難しいところでもあります。
05NURTUREまとめ
フランスの販路開拓は、数を打つ営業では決まりません。飛び込みの物量より、ターゲットを見極めて刺さる少数に絞り、現地で関係を育てること。そして、受注まで時間がかかることを前提に、焦らず切らさず続けること。フランスで売れるかどうかは、何件回ったかではなく、誰に、どう関係を築いたかで決まります。
初月の打率が1割強でも、そこから絞り込み、関係を育てれば、受注は動きます。逆に、絞らずに数だけを追うと、時間も足も消耗して、結果が出ないまま撤退することになりかねません。
この「絞って、現地で関係を育てる」という営業は、日本から遠隔でやりきるのが最も難しい部分です。パリ・南仏で日本ブランドの現地営業を担ってきた私たちが、ターゲットの見極めから訪問・ヒアリング・受注までを現地で動きます。フランスの販路開拓を具体的に相談したい方は、無料相談からお気軽にお問い合わせください。
よくある質問
Q.フランスの販路開拓は、飛び込み営業で数を打てば売れますか?
数を打つだけでは、なかなか売れません。ある日本ブランドの初月営業では、提案メール40通あまり・飛び込み訪問20数件を動いて、手応えのある商談まで進んだのは3件でした。打率にすると1割強です。飛び込み自体は門前払いされにくく、その場で話を聞いてくれることも多いのですが、それがすぐ受注になるわけではありません。物量ではなく、刺さるターゲットを見極めて、現地で関係を築いていくほうが結果につながります。
Q.フランスのバイヤーは、なぜすぐに取引してくれないのですか?
商談から受注まで、フランスでは2ヶ月以上かかることが珍しくありません。オーナー自身がじっくり検討する文化があり、仕入れの時期も決まっているからです。初回訪問で興味を持ってもらえても、その場で決まることは稀で、後日の商談・検討を経て、仕入れ時期に受注が動きます。すぐに結果が出ないことを前提に、関係を切らさず育てる設計が必要です。
Q.フランスで営業するとき、最初にやるべきことは何ですか?
ターゲットを絞ることです。自社の商品と、価格帯・ブランドイメージ・顧客層が一致する相手に集中します。たとえば、新しい商品を積極的に取り入れる文化のある高級セレクトショップや、その商品と親和性の高い業態(茶葉店に和の器、書店に和文具など)は反応が違います。手当たり次第に回るより、刺さる少数に資源を集中するほうが受注に近づきます。
Q.フランスの店を訪問するとき、何を準備すればいいですか?
フランス語の営業資料が必須です。英語を話せる人も多いですが、フランスではフランス語が好まれるため、フランス語を主に、英語を補助にします(現地で印刷することもできます)。そのうえで、訪問は「売り込む場」ではなく「聞く場」だと考えることが大切です。現地の価格感・売れ筋・包装文化を店ごとにヒアリングすると、次の提案の精度が上がります。断られた場合でも、その理由を聞ければ、それ自体が次に活きる一次情報になります。
SITEN — France Market Entry
フランス販路開拓を、現地で動く体制で。
この記事の内容を、パリ常駐チームが実務として代行します。戦略設計から現地商談・成約フォローまで一気通貫。
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SUGAR編集部
パリ・南仏で日本ブランドの現地営業を担ってきたSUGAR編集部が、複数の現場をもとに構成しています。


