フランスの展示会・販売会は出て意味があるのか |注文ゼロでも成果は出る
フランスの見本市(展示会)や販売会に出ると、その場でも注文や即売はあります。ただ、それだけを成果の物差しにすると、たいてい落胆します。とくに見本市では、バイヤーはその場で発注を決めるより先に、新しいブランドとの出会いを持ち帰るために来ているからです。しかも、ひとくちに「出展」と言っても、バイヤーが集まる見本市と、一般のお客様に売る販売会では、客層も成果もまったく違います。本当の成果は、見込み客のリストと、次の商談、そして出展後のフォローにあります。パリと地方都市での複数の出展に同行してきた経験から、両者の違いと、成果の測り方、出る前後にやるべきことを整理します。
01OVERVIEWフランスの「出展」には2種類ある — 見本市と販売会を分けて考える
まず、この2つを混同しないことが出発点です。相手が違えば、成果の測り方も、準備も、フォローも変わるからです。
見本市(展示会) は、メゾン・エ・オブジェのような大規模イベントが代表です。ここに来るのは、仕入れを目的としたバイヤーや小売店。つまりBtoBの商談の場です。その場で卸注文がまとまることは稀で、成果は「興味を持ったバイヤーの来場リスト」と「後日の卸商談・受注」という形で、あとから出てきます。
販売会・受注会 は、店舗やイベント会場で、一般のお客様(エンドユーザー)に直接売る場です。パリの店での店頭イベントや、地方都市の日本文化イベントがこれにあたります。相手は最終消費者ですから、その場で買ってもらうことが主目的です。ただし、成果をその場の売上だけで測ってしまうと、見誤ります。買わずに帰った人も、見込み客・次回販売会の予約・店との関係という形で残るからです。
同じ「出展」でも、見本市は後日の卸取引につながるバイヤーとの接点をつくる場、販売会はお客様にその場で買ってもらう場です。目的が違えば、成果の測り方も変わります。自分の商品がどちらに向いているか、どちらに出るのかを見極めないまま準備を始めると、狙いがずれます。以下、この2つを分けながら見ていきます。
02TWO-TYPES日本メーカーが最初につまずく誤解
多い誤解は、「出れば、その場でまとまった注文が取れる」というものです。とくに見本市は、ブースに立てば商談からすぐ受注へ、という日本の感覚のまま出ると落胆します。バイヤーは多くのブースを見て回っていて、その日のうちに大きな発注を決めることは多くないからです。見本市の受注の多くは、後日に動きます。
販売会は、その場で買ってもらうのが主目的ですから、即売そのものは起きます。それでも、「その場で売れた分」だけを成果と数えると、取りこぼしが出ます。あるパリの店での販売会に立ち会ったとき、現地スタッフがこう報告してきました。「そもそも商品を買いに来るという目的ではなく、新しい素敵なブランドを"認知する"という目的で来場されている方が多かった」。つまり、その日に買わなかった人の中にこそ、次につながる見込み客がいたのです。
ここを取り違えると、「思ったほど売れなかった=失敗だった」と早合点し、一度出してやめてしまう。これが、フランス進出でいちばんもったいないパターンです。見本市も販売会も、成果はその場のレジだけでなく、そのあとに動き出すものまで含めて測るものだからです。
03MISUNDERSTANDING実際に何が起きるか — 見本市と販売会、それぞれの成果
注文が取れないなら何が起きているのか。2つを分けて、現場で実際にあったことを挙げます。
見本市(バイヤー向け)で起きること
ある大規模見本市に出たときは、5日間の会期で、バイヤーの来場者リストが約75件たまりました。会期中にその場での注文もいくつか入りましたが、それ以上に大きかったのは、この来場リストをきっかけに、後日の商談を通じて、注文がフランス国内にとどまらず、イタリア・スウェーデン・アメリカと、複数の国の店へ広がっていったことです。見本市の成果は、その場の注文の数よりも、あとから効いてくる「バイヤーとのつながりの数」で出るのです。
実際、私たちがある取引先とつながったきっかけも、前年の見本市で集めた来場者リストへのフォローでした。その場では注文がなくても、後日ていねいに連絡を取り続けた先が、卸の取引先になっていったのです。
販売会(エンドユーザー向け)で起きること
販売会は、その場で買ってもらうのが本来の狙いです。ところが、あるパリの高級店での販売会では、当日の注文はゼロでした。けれど、次回の販売会の案内を希望するお客様の連絡先を10件獲得しました。さらに、その店の責任者が商品の品質を高く評価し、イベントの最中に自らお客様をブースへ連れてきてくれたのです。そしてその場で、次回の出展まで決まりました。注文ゼロという数字だけを見れば失敗ですが、実際には「見込み客リスト・現地キーパーソンの信頼・次の機会」という三つの成果が残っています。
地方都市の日本文化イベントでは、1日で約700名が来場しました。ここでは、その場で手に取って買ってくださる方が多くいました。そしてそれと同じくらい大きかったのが、「ブランドのカードはあるか」と何人にも聞かれたことです。つまり、その日に買わなかった人ほど、あとで探せる手がかりを求めていた、ということです。
見本市も販売会も、共通しているのは「種まきの場」だということです。その場で刈り取れる実は多くありません。けれど、まいた種は、リストとなり、信頼となり、次の機会となって、あとから育ちます。
04REALITY出る前に準備すべきこと
成果が「その場の注文」ではなく「そのあとのつながり」で決まるなら、準備すべきものも変わります。現場の失敗から学んだ、最低限そろえたいものを挙げます。
まず、見本市・販売会に共通して必要なもの。
- 連絡先を残してもらう仕組み — これがいちばん大事です。出展後のフォローができるかは、当日どれだけリストを取れたかで決まります。名簿でもタブレットでも、相手が気軽に連絡先を残せる形を用意します。
- ブランドカード(QR付き) — ブランド名とSNS・HPのQRを載せた名刺サイズのカード。「あなたのブランドのカードはあるか」は、フランスで本当によく聞かれます。その場で決めない相手に、あとで思い出してもらうための最小の道具です。
- 多言語のパンフレット — フランス語と英語。相手が自分で読めて、持ち帰れるもの。
そのうえで、見本市と販売会で用意するものが分かれます。
- 見本市なら、卸取引の資料 — バイヤーが持ち帰って社内で検討できる、卸価格やロット、納期の条件がわかる資料。相手は「仕入れて売れるか」を見ています。
- 販売会なら、店頭価格の価格表と、使い方が伝わるデモ — エンドユーザーが自分ごととして見られるように。価格は現地の商習慣(店頭価格は卸値の2〜2.5倍)を踏まえて設計します。たとえば風呂敷の包み方を実演したところ、お客様の反応が明らかに変わった、という経験があります。
どちらの道具も、その場で売るためではなく、出展後のフォローにつなぐためのものです。準備の段階から、出展をゴールではなく入口として設計しておくことが大切です。
05PREPARE出たあとが本番 — フォローの設計
見本市も販売会も、出て終わりではありません。終わってからのフォローで、成果のほとんどが決まります。ここを設計せずに出るのは、集めたリストをそのまま捨てているのと同じです。
フォローには順番があります。
- まず、お礼の連絡 — 会期中〜終了後の数日以内に、ブースに立ち寄ってくれた相手へお礼を送ります。早いほど、記憶が新しいうちに届きます。
- 次に、リストを1件ずつ整理する — 「誰が・何に興味を持っていたか」を1件ずつ見ます。まとめて一斉送信せず、相手ごとに温度を見て分けることが、次につながります。
- そして、相手に合わせて続ける — 見本市で出会ったバイヤーには、現地の仕入れ時期に合わせて卸の商談を持ちかける。販売会で出会ったお客様には、次回販売会の案内を届ける。相手が違えば、フォローの中身も変わります。
さらに大きいのは、「同じ場所に出続ける」ことです。ある販売会イベントでは、複数年出続けることで主催者や来場者に顔を覚えられ、単独出展から複数ブランドをまとめた出展へと発展していきました。一度きりの勝負ではなく、地道に続けることで効いてくる——現場のクライアントも「個展と同じで、地道に続けることが大切」と話していました。
06FOLLOWUPまとめ
フランスの見本市も販売会も、その場でも注文や即売はありますが、それだけで成果を測る場ではありません。しかも、バイヤーが集まる見本市と、お客様に売る販売会では、成果の形も準備もフォローも違います。まず自分がどちらに出るのかを見極めること。そのうえで、当日の注文がゼロでも、それは失敗ではないと知っておくこと。見本市も販売会も、本当の成果は、その場の注文ではなく、見込み客リストと次の商談、そして出展後のフォローで決まります。
出る前に「連絡先を残してもらう仕組み」を用意し、出たあとに1件ずつ、相手に合わせてフォローする。そして、一度で判断せず、続けて出る。この設計さえ持っていれば、「注文が入らなかったから、もうやめる」という、いちばんもったいない撤退を避けられます。
自社の商品でフランスの見本市・販売会に出るべきか、出るとしてどう準備し、どうフォローの設計を組むか——現地での出展経験をふまえて具体的に相談したい方は、無料相談からお気軽にお問い合わせください。パリ・フランス各地での出展をご一緒にしてきた経験から、成果につながる出展をお手伝いします。
よくある質問
Q.フランスの「見本市」と「販売会」は何が違いますか?
相手が違います。見本市(メゾン・エ・オブジェのような大規模イベント)は、バイヤーや小売店が仕入れのために来る商談の場(BtoB)です。一方、販売会・受注会(店舗やイベント会場で開くもの)は、エンドユーザー=一般のお客様に直接見せて売る場(BtoC寄り)です。相手が違えば、成果の形も、準備も、出展後のフォローも変わります。まず自分がどちらに出るのかを見極めることが出発点です。
Q.フランスの見本市は、その場で注文が取れますか?
その場でも注文は入りますが、大きな発注をその場で決めるバイヤーは多くありません。バイヤーは多くのブースを見て回っているからです。見本市の本当の成果は、その場の注文の数よりも、興味を持ったバイヤーの来場リストと、後日の卸商談・受注にあります。実際、ある大規模見本市では会期中の来場者リストがきっかけとなり、注文がフランス国内にとどまらず複数の国の店へ広がった例があります。
Q.販売会で注文が入らなかったら、失敗ですか?
販売会・受注会は、その場で買ってもらうことが主目的です。ただ、注文が振るわなくても、それだけで失敗とは言えません。成果は、その場の売上のほかに、①興味を持ったお客様の見込み客リスト、②次回販売会の予約・案内希望、③会場のキーパーソンとの関係、があるからです。あるパリの高級店での販売会では、当日の注文はゼロでしたが、次回案内を希望する見込み客の連絡先を10件獲得し、店の責任者が自ら客をブースへ案内してくれ、その場で次回の出展まで決まりました。
Q.見本市・販売会に出る前に、何を準備すればいいですか?
共通して必要なのは、①相手の連絡先を残してもらう仕組み、②多言語(仏・英)のパンフレット、③ブランド名とSNS・HPのQRを載せたカードです。加えて、見本市なら卸価格の資料を、販売会なら店頭価格の価格表と商品の使い方が伝わるデモを用意します。どちらも「その場で売る道具」ではなく「出展後のフォローにつなぐ道具」だと考えて準備するのが要点です。
SITEN — France Market Entry
フランス販路開拓を、現地で動く体制で。
この記事の内容を、パリ常駐チームが実務として代行します。戦略設計から現地商談・成約フォローまで一気通貫。
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SUGAR編集部
パリ・フランス各地の出展に同行してきたSUGAR編集部が、複数の現場をもとに構成しています。


